2010年1月30日土曜日

能に於ける武術性

 たった2回程、稽古を受けたものに何が分かる、と仰る方もいらっしゃることではあろうが、一芸は全てに通ず、まあ、そう言わず、この文章を読んで頂きたい。
 さて、下の図を見て欲しい。
これは、私が弟子や後輩に、重心の重要性を教える為に作った資料である。
 この中で正しいとした立ち方、実は能の立ち方と全くもって一緒なのである。
この立ち方であれば、どのような状況であっても、どのような方向にも、予備動作無しで、つまり、無拍子で移動することが可能なのである。
 能は武士の嗜(タシナ)みとして、脈々として受け継がれてきた所以がここにあるのではなかろうか。 更に、能の素晴らしい所は、腕の構えにある。腕を体に対しておおよそ角度30度程持ち上げて、楕円を描くように湾曲させる。この時、背中側の筋肉、つまり上腕三頭筋で押し上げるような意識で腕を支えると教えられた。この意識を持つことにより、屈筋の無駄な力、力みを取り去ることが出来る。
そして、手の形は下の写真のように軽く小指から握り込み、親指を人さし指に添わすように置く。このことで、適度な屈筋の使用により、無意識下で出てしまう力みを防いでくれる。
 つまり、能の立ち方は武道に於ける究極の理想形なのである。

 武術が「動」の武士道ならば、能は「静」の武士道と言える。
 舞という自分たちの娯楽であり、教養でもあるモノにまで、時代の培った知恵を入れ込む凄さは、唯々、先人の偉業の素晴らしさに舌を巻くばかりである。

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